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浦和・ペトロビッチ前監督が目指した『世界のスタンダード』とは?

川本梅花(以下、川本) 浦和は2010年最初のプレシーズンマッチ(さいたまシティカップ)で大宮と対戦して、負けたよね?(0-3) あの時点で、サッカー自体はヤバいサッカーだったよね。何がヤバいかっていうと、サッカーのシステムは選手の質で作るわけだから、チームの選手に合ったスタイルが求められる。でも日本に来て失敗する監督っていうのは、最初に自分のスタイルがあって、それに選手を当てはめるやり方をする。それは失敗するパターンなんだよ。

清水英斗(以下、清水) そうですね。代表チームの監督ならセレクトできる選手の幅が広いので、自分のスタイルありきでも成功するかもしれませんが、選手が限られているクラブチームの場合は、スタイルありきだと失敗する監督が多いですね。今シーズン、インテルを率いてすでに解任されたガスペリーニ、ローマを率いているルイス・エンリケも、同じパターン。

川本 自分のスタイルを構築するには時間がかかる。そのやり方で失敗して、後から成功したっていう例は広島のミハイロ・ペトロビッチだよね。J2に落ちて、そこから作り上げたわけでしょ。柏のネルシーニョもJ2でチームを作り上げている。彼がチームを降格させたわけじゃないけど、実質、J2から始まっているわけだよね。ゼリコ・ペトロビッチ(以下ペトロ)の場合も、1年目でACL出場というような、すぐに結果が出るチームを作り上げるタイプの監督じゃないんだよね。

清水 確かに。ペトロと話せば話すほど、この人は長期育成型の監督なんだなと感じました。僕はプレシーズンの大宮戦を見て、ペトロのやりたいことは面白いと思いました。タッチライン際にサイドの選手を張らせること、ドリブラーを生かすこと。そういうピッチ幅を広く使ったサッカーを試みるチーム自体がJリーグに少なかったので、浦和がどのようなステップを踏むのか、非常に興味がありました。

川本 ペトロのサッカーをどう評価するかなんだけど、僕はレベルの高いことをやろうとしていたと思うんだよ。ヨーロッパのスタンダード、トップクラブがやっているようなサッカーをやりたかったと思う。ただ、それには選手のレベルが低すぎるし、それは技術的にもそうだけど、サッカー脳の質も問題だった。

清水 僕は、浦和の選手が、ペトロに言われたことに縛られてプレーしている印象も受けました。言われたことしかやらないというか。一つ例を挙げると、シーズン中のあまり良くない時期に、永田充は「監督に言われたことはやっているから、別にいいでしょ」というような不満を口にしたことがあったんですよね。軽い開き直りみたいな。でもサッカーって、そういうものじゃない。監督に言われたことをやるだけでは、変化し続けるピッチ内の状況に対応できない。

川本 選手はペトロが求めているものを、文字通り解釈して、今みたいに言うわけだよ。「言われたようにやってるからいいでしょ」って。でもさ、一つ例を挙げると「サイドに張れ」って言われたときに、“サイドに張ることの意味が何か?”ということを選手は考えてないんだよ。「自分はサイドに張っているから自由にプレーできない」って主張するんだよね。でもペトロがなぜサイドに張れって言っているのかを、考える選手がいれば、僕はもっと違う結果になっていたと思うんだよ。

清水 その意味とは?

川本 ペトロはサイドに張れと言ったけど、なんでサイドに張らせるのかといえば、真ん中に人数を増やしたいから。一見、サイドに張ると選手間の距離が開くと考えるでしょ? だけどヨーロッパのトップリーグを見ると、サイドに張らせるチームはすごく多いんだよ。それはサイドを攻撃の基点にする意味もあるんだけど、サイドに張らせることで真ん中に人を集めて厚みを持たせたいんだよ。中央突破が優先的な選択肢だから。

 だから浦和の場合も原口元気を左サイドに張らせて、田中達也やマルシオ・リシャルデスを右サイドに張らせるのはサイドアタックを主にしたいわけじゃなくて、真ん中に厚みを持たせて真ん中を攻略したいのがペトロにはあったと思うんだよ。そこで真ん中が詰まったらサイドにボールを回すことになるんだけど、そこを選手は理解してなかったと思う。そして、それをペトロがちゃんと伝えられていたかといえば、伝える能力も彼は低かったと思う。

清水 ペトロがプレシーズンからシーズン序盤にかけて、ずっとメディアに対して繰り返していたのは、「(原口)元気の良さを生かす」ということでした。それを聞いたメディアの人たちは「浦和の戦術=サイドアタック」という伝え方をしていたんですけど、僕はあくまで「(原口)元気の良さを生かす」というのはチームの形ではなく、戦術のスタートラインだと理解していました。サイドに相手の脅威となる原口を置くことで、真ん中を突破しやすくなる。そういう当たり前な方向性を持っていたのだろうと。

川本 そもそも、原口を真ん中に置いたらどうなる? って話でさ。

清水 そうですね。だから最初、サイドに張っていたときに原口は輝いていたけど、だんだん結果が出ずに4-4-2もやって、原口が真ん中ぎみに寄ってプレーするようになったら、それなりに対応しつつも、徐々に彼は調子を落としましたよね。真ん中でプレーするには視野や状況判断がつたない。本人も日本代表で香川真司のプレーを見て、「次元が違う」とショックを受けていましたけど、まさにそういうこと。

川本 ドリブラーがサイドに張るのは、相手のサイドバックと1対1になったときに真ん中で1対1になるよりも突破を成功させる確率が高いわけでしょ。原口は山田直輝みたいに味方を使って空いたスペースに入る動きができるかといったら、できない。だから原口をサイドに置くしかないっていう選択だったと思うんだよね。

清水 そうですね。そして結局、ドリブラーの原口を置いたことに攻撃のパターンが縛られて、中央を崩す攻撃はなかなか向上しませんでしたね。

川本 真ん中に厚みを持たせるためには、もう一つポイントがある。ペトロは永田充に、ナポリのパオロ・カンナバーロやバルサのジェラール・ピケのようにプレーすることを求めていたんだよ。

清水 と、言うと?

川本 今は3バックを使うチームが増えているけど、例えば、ナポリの3バックとバルセロナの3バックがあって、それらは何が違うのか? ボールを持っているとき、ナポリはウイングバックがタッチライン際に張って前線まで上がり、守備のときは最終ラインまで下がる。

清水 ナポリのウイングバックは、基本的にはタッチライン際の上下動ですよね。

川本 それを終始繰り返すんだよ。必然的に5バックになったりするけど、そうやって最終ラインに飲み込まれるのも良しとしているわけ。

清水 そうですね。一方、バルサの場合は3バックがサイドへスライドしてピッチ幅を広くカバーするので、ナポリのようにはならないですよね。

川本 そう。そしてナポリの真ん中のセンターバックはP・カンナバーロなんだけど、バルサの真ん中の守備はピケ。彼らの守備については、実はやっていることは同じ。相手のFWに対してすごく前へ出てチェックしていく。自分のポジションを捨てて出て行き、相手のFWがボールを持った瞬間、そのFWの背後にいるんだよ。

で、相手FWは前を向けないからバックパスを出す。そうしたら、P・カンナバーロやピケはまたポジションに戻る。これを繰り返すんだよ。それも、ちょっと前過ぎないか、ってところまでチェックに行く。ペトロが永田充に言っていたのはそういうことなんだよ。自分のポジションを捨ててでも、前に思い切りプレスに行けと。ボールを取れなくても一回ボールを下げさせて戻れと。

清水 攻守の切り替えから素早くプレッシングすることが約束事になっているチームは、センターバックが中盤に積極的に出て行きますよね。真ん中に厚みが出る。

川本 それが永田にはできていなかったんだよ。一方、前線を見ると、ナポリとバルサは両方とも3トップ(最近のバルサは3”5”2)。バルサはセンターフォワードのメッシが最前線から下がってくるけど、ナポリのセンターフォワードは下がらない。そして両ウイングはどうかといえば、バルサはタッチライン際に張るけど、ナポリはセンターフォワードの下に2人のFWがいる。

清水 そこがバルサの大きな特徴ですよね。ナポリは、1トップ+2人のシャドーストライカーみたいな感じ。

川本 そう。で、バルサの場合はセンターフォワードが下りてくるけど、ペトロはセンターフォワードのエジミウソン(現アル・ガラファ/カタール)を最前線に張らせていたよね。で、ウイングFWも張らせるから、浦和の場合、真ん中にいるのはマルシオ・リシャルデス、柏木陽介、鈴木啓太の3人しかいない。人数が足りないんだよね。ウイングをサイドに張らせたのは、原口がドリブラーだから勝負をさせるのと、真ん中に厚みを持たせたいということなんだけど、真ん中が3人しかいないから、人が足りない。じゃあセンターバックが攻撃参加するかといえば、しないでしょ。永田はそういう選手じゃないから。足元はうまいほうかもしれないけど、ビルドアップ能力ってないでしょ。

清水 キックの精度はいいけど、永田はボールを持って運べないですよね。

川本 ドリブルでゲームを作るところって全然見られないんだよ。

清水 相手を抜けと言っているわけじゃないんですよね。浦和はスペースにボールを運ぶドリブルができない選手が多い。永田もそうだし、坪井慶介もそうだし、鈴木啓太もいまいち。柏木陽介は、序盤は全然ダメで徐々に良くなってきたけど、まだまだ突出したとは言えない。浦和はそういう運ぶドリブルが苦手な選手が多いんですよね。というより、できる選手がどんどん出て行ってしまった。

川本 だから真ん中が薄くなるんだよ。何を言いたいかっていうと、3バックなら真ん中を1人増やせるでしょ。バルサは3バックで中盤の4人をダイヤモンドにしてるんだよね(3”4”3の場合)。真ん中で人数が1人増えて4人になるし、4バックのときはピケが攻撃に参加するから、やはり1人増える。だけど浦和の場合は、中盤に3人しかいなくて。

清水 バルサはセンターバックのピケかアビダルが上がり、センターフォワードからメッシが下がるから結果的には中盤は5人。だけど浦和は3人。フォーメーション表記は同じでも、ここの運用が決定的に違うんですよね。

川本 そういうことなんだよ。だから4バックで前線にウイングFWを張らせても、バルサは中盤を支配するのが可能だけど、浦和の場合はまずセンターバックに問題があって。ただ守備をするだけの人というのは、現代サッカーでは考えられない。ましてペトロが望んでいたのはオランダ式のサッカーだから。アヤックスを見てもらえればわかるけど、センターバックがものすごく攻撃参加する。MFのところまで上がって行く。サイドに張らせつつ、真ん中に厚みを持たせて突破したいから。

清水 そうですね。単純に真ん中をコンパクトにすると、相手の守備も真ん中が厚くなって渋滞を引き起こしてしまうけど、こちらがサイドにウイングを張らせた状態でそれをやると、相手の真ん中の守備を薄く引き延ばした状態で、こちらが枚数で優位に立てるんですよね。バルサのように。

川本 そう。それにたどり着くためには、ペトロが考えていた理想と、実際の選手の技量、そしてペトロの伝達能力。問題点はそこにあったと僕は思うんだけど。

清水 そこは完全に同意です。

川本 これはあくまで僕の勝手な想像なんだけど、エジミウソンがセンターフォワードやっていたけど、あそこでボールが収まらなかったでしょ。「あれ、こんな選手だったっけ」、と思うような場面が何回もあったんだよね。後ろからボールが来ても全然体を張らない。どうしたんだろうなと思っていたら、カタールに移籍したでしょ。表面上は「行きたくないけどクラブが容認したから」という話になってるんだけど、僕はあれ、初めから出来レースなんじゃないかって思ってるんだよね。

清水 なんと。

川本 新潟戦のエジミウソンのプレーを見たらわかるんだけど、ものすごいんだよ。新潟のホームでの試合。そのときのエジミウソンのプレーはものすごく切れていて、それは移籍が決まってからの試合だったんだよ。だから、わざと力を出さなかったんじゃないかって。代理人を通じてカタールのクラブと話が決まっていて……と思うくらいプレーが違ったんだよね。全然、確証はないけどさ。

清水 ペトロは解任後に「今さらだが、あのときエジミウソンを何としても引き止めておけば良かった」と後悔していましたよね。もしも本当なら、ペトロもだまされたということですけど。

川本 まあ、そう疑いたくなるほどエジミウソンが機能していなかった理由がわからないということなんだよ。能力があるのに、あそこでボールが収まらなければ話にならないわけでしょ。

清水 たしかに。センターフォワードもセンターバックも真ん中の組み立てに参加できないのであれば、中央からの攻撃はうまくいかないですよね。

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