2004年3月某日・・・。年末に行われるサッカー天皇杯へ出場する東京都代表を決める、東京カップの2回戦が行われた。強豪ひしめく東京ブロックを勝ち抜くことは容易なことではないが、我がチームもプロと対戦できる天皇杯本戦を目指して必死で戦った。
しかしその結果は、期待を大きく裏切る1−6の負け。しかも対戦相手は去年2−1で勝ったチームだ。さすがにこの結果には、誰もがショックや悔しさを隠せなかった。惨敗だ。負け惜しみにしかならないのかもしれないが、相手がウチよりも技術・フィジカルで勝っているとは思えなかった。むしろ原因はウチのチームにあり、集中力・一体感というものがどこか欠けていた‥。
「戻れ!ディフェンス戻れーー!」
ベンチから監督の声が鳴り響く。サイドバックの戻りが遅い。
「当たれ!当たれー!」
足先だけでボールを取りに行き、体を当てない中盤。こぼれ球は全て相手に拾われてしまう。
「呼べ!声出せー!」
スペースに走り込んでも、ボールを要求しようとしないフォワード。当然、パスは出てこない。
そういった組織全体の乱れを相手に突かれ、1失点‥2失点‥ついには6点もの大量失点を喫してしまった。ボールへの執着心、勝ちへの意識は、去年の都リーグ3部で優勝したときとは全く別のチームだった。一生懸命プレーはしたが心の芯まで集中できたとは言い難かった。
この試合が行われる数週間前‥。
実は僕らは、1回戦を不戦勝で勝ち上がった。原因は相手チームが人数を揃えられなかったためだ。僕らの感覚では信じられないことだが、4部あたりのチームでは起こり得ることだ。新選手が多く加入し、まだ完成度の低かった僕らのチームにとって実戦は極上のチーム練習だった。そのために朝早くから意気揚々とグラウンドに集まったが、試合中止の連絡には誰もが言葉少なげだった。今にして思えば、このとき既にチーム全員の想いはバラバラになっていたのかもしれない。ずっと張り詰めていた、見えない緊張の糸が切れてしまっていたのだ。この日以来、チームに流れるダラッとした雰囲気を感じていた者もいたが、最後までどうすることもできなかった。
スポーツにおいて最も大事なのは、モチベーションである。激戦を勝ち抜いたチームというのは、モチベーションが自然と高まっていく。一昨年のW杯で優勝したブラジルも、南米予選を大苦戦の末勝ち上がっている。またベスト4入りを果たした韓国も、予選ではポルトガルと同じ組に入りながらこれを撃破、スペイン、イタリアと次々と強豪を破る。勝つことがチームにとって唯一の特効薬、それを実感させる戦いだった。
僕らはあの不戦勝によって楽をして勝利する味を覚えた。
その代償はあまりに大きかったのだ。


