1.FSV Mainz05 vs Eintracht Frankfurt
1−1(前半0-1)
この試合は両チーム(特にフランクフルト)の今後を不安視させるゲーム内容だった。始まって3節でこれを言うのも余りに時期尚早に過ぎるというものだが、「降格」の2文字がチラチラと浮かんでしまうほどだ。その点をじっくりと辛口トークで責めたいところだが、まずは高原が移籍したこと以外は日本人になじみの薄いこの両チームについて、歴史的な重みを含めて紹介させていただきたく思う。
ドイツの地理に明るい方なら知っているかもしれないが、マインツとフランクフルトは電車で40分程度の距離にあるご近所さまである。そのため、マインツを流れる「ライン川」、フランクフルトを流れる「マイン川」の名前を取って、この試合は「ラインマインダービー」と呼ばれている。
ところが歴史上、この「ラインマインダービー」がブンデスリーガで実現したのは昨シーズンが初めてなのである。マインツはドイツ国内でも珍しい遅咲きのクラブであり、2001年にマインツOBであるユルゲン・クロップが監督に就任したことで急速に力を付け、2005年にクラブ史上初めてブンデスリーガ昇格を果たした。マインツは1905年に創設されたクラブであり、2005年はクラブ創設100周年にあたる。ゆっくりと想像してみて欲しい。なんと1世紀もの間、昇格をめざしてドイツ下部リーグを戦ってきたのである。
Jリーグが出来てたかだか10数年の日本に生まれた僕にとって、その途方もない歴史の大きさにはただ脱帽するばかりである。
ところが、マインツが初めてブンデスリーガの表舞台に立った2004-2005シーズン、ラインマインダービーが話題になることはなかった。フランクフルトはブンデスリーガ、UEFAカップも制したこともある古豪クラブだが、近年は1部と2部を往復する低迷期に入っており、2004-2005シーズンは時悪く2部に降格してしまっていた。
そして昨シーズン、101年の時を経てついにブンデスリーガで顔を合わせたマインツとフランクフルト。昨シーズンの残留に成功したことにより、今年はダービー2季目を迎えることが出来る。はなれ離れだった100年の空白の時を埋めるべく、この出会いが長く続くような戦いを両チームに期待したいと思う。

『マインツホームゲームでは、試合前にマフラーを掲げてバラードを歌っている。僕の前にいたおじいちゃんは、ハーフタイム中にマインツのステッカーを隣りの人のお尻に貼ったりと、まるで子供のようにはしゃいでいた。 photo by 清水英斗』
攻撃が迷宮入りしたフランクフルト
フランクフルトは開幕戦を4−4−2、第2節を4−5−1で臨んだものの攻撃がまるで機能しなかった。フンケル監督率いるフランクフルトは、基本的にショートパスを使って攻撃を組み立てるドイツらしからぬチームである。その中心はFWのギリシャ代表アマナティディスであり、彼の体を張ったポストプレーからMFテュルク・シュトライト・マイヤーらが衛星として動いてスペースを突いていく。が、この攻撃は今のところほとんど上手く行っていない状況である。狭いスペースに追い込まれて無理な縦パスを出すしかなくなり、広いエリアへの展開が出来ない。そればかりかボールを奪われた後、サイドバックが中途半端に上がったスペースを何度もカウンターで突かれ、ここまで引き分けを2つ拾ったことが幸運に思えてしまうのが現在のフランクフルトだ。
この日のダービーでは、フンケル監督は大手術を敢行する。ずっと4バックで戦ってきたディフェンスを3バックに変更し、3−4−3の中盤をトリプルボランチで臨んだ。3トップのウィング、シュトライトとテュルクにボールが入ったらそれをトリプルボランチの両翼が追い越してサイドを崩していく狙いが見て取れた。しかし、前線のフリーランニングの質・量不足で効果的にスペースを作り出せないまま、ゲームはマインツペースで進んでいく。
中でも前半、特にテュルクの動きが悪くミスが目立った。彼は今シーズン、マインツからフランクフルトに移籍してきた選手で、マインツサポーターにとってはまさに裏切り者である。「もうこれ以上の移籍は沢山だ」というメッセージを掲げたホームのマインツサポーターは、テュルクがボールを持つたびに大ブーイングを浴びせていた。
しかしこういったブーイングも、通常ならばプレー自体に影響を及ぼすものではない。気にしなければ済む話である。しかし、本当にスタジアムが揺れんばかりのブーイングは、観客席にいた僕の体にもビリビリと響いて重量感を感じるほどだった。"音"の凄さを思い知った。
「サポーターが放つ凄まじい怒りの和音は、確実に彼のプレーを止めていた。」
実際にスタンドにいた僕はそう思わざるを得なかった。
狭い中に引き付けて広いサイドに展開することが全く出来ず、結局90分を通して今後につながるような組織的攻撃はほとんど見られなかったフランクフルトだったが、試合は意外な形で先制点が生まれる。

『スタジアムに集まった20,300人の観客のうち、フランクフルトサポーターは3,000人程度。しかしわざわざアウェーの地にまで駆けつけた精鋭サポーターは叫び、歌い、踊り、圧倒的な存在感をスタジアムの中で誇っていた。 photo by 清水英斗』
なんと3戦連続・・・
前半25分、FKから左サイドでパスを交換した後、シュトライトが右足でアーリークロスを放り込み、真ん中で待っていたアマナティディスがヘディングで叩き込む。オフサイドを狙ったマインツDFだったが、サイドバックのチャドゥリが残っていたのか狙いは不発に終わり、一瞬の隙が失点を生んでしまった。
マインツは前後半を通してチャンスを多く作った。アザウアが中央で運動量を発揮し、フランクフルトの3ボランチの注意が中央に引きずられたところでサイドのフォイルナーに展開。前を向いてボールを受けたフォイルナーは、そのまま縦を何度もえぐり、DF2人をかわす個人技の高さを見せた。マインツには後半から入ったエドゥなど、スピードがある縦に勝負できるドリブラーが何人かいる。こういった選手がフランクフルトにも欲しいところだが…。
しかしながらマインツも最後のシュートが度々ポストを叩くなど決定力を欠き、後半に入ってもなかなかゴールを奪えない。そこへ試合展開を変えるアクシデントが発生した。
後半19分、MFシュパイヒャーが2枚目のイエローで退場してしまい、当然ながらフランクフルトは1−0の逃げ切り体勢にギアを切り替えた。攻め立てるマインツだったが、やはり最後のシュートが入らない。マークが余っているのだから、右サイドバックのチャドゥリがもっと攻め上がっても良かったと思うのだが…。もともと攻撃の選手だけに、1点ビハインドの場面であの消極的なポジショニングには疑問符を付けざるを得ない。(チャドゥリは後半30分に交代で退く)
フランクフルトに待望の初勝利が転がり込むか・・・。
昨シーズン、ラインマインダービーは「2−2、0−0」で、2試合とも引き分けに終わっている。この日悪いながらも粘るフランクフルトが、ダービーに新たな歴史を刻むかに思われた。

ところが後半39分、ついにマインツは右FKからヨヴァノヴィッチが同点ヘッドを叩き込む。この瞬間フランクフルトの今シーズン初勝利が消えて、ラインマインダービーは何と3試合連続の引き分けに終わった。
フランクフルトは後半43分にもDFのヴァゾスキを一発レッドで欠いており、次節フンケル監督は機能しない攻撃に加えて、コマの減った守備陣にも頭を悩ませることになりそうだ。
ちなみにフランクフルトの高原はこの日もベンチ入りせず。今のチーム状態を見るならば、彼の出番は必ずやってくるに違いない。逆に言えばこのひどいチーム状況で出場できないとき、もしくは結果を残せなかったとき・・・それは高原のJリーグ復帰を意味することになるだろう。

最後にドイツの天気についてひとつ。
この日は、前半が快晴 → ハーフタイム中に豪雨 → 後半20分に雨が止み → 後半40分に再び雨が降るという有り様だった。濡れたピッチではバウンドしたボールが伸びるなど、芝の状況を常に考慮に入れなければならないが、こうも状況がコロコロ変わるのでは選手にとっても大変である。
しかしこの気まぐれな天気は、ドイツでは全く珍しいことではない。
ブンデスリーガには、分単位で変わるピッチコンディションで柔軟に対応する適応力が求められるのだ。


