ボスニア・ヘルツェゴビナ代表 vs 日本代表
2−2
強化試合と呼ばれるゲームでは、引き分けが最も望ましい。
負ければ当然自信がなくなるし、もしも勝った場合でも自信が油断に変わってしまう恐れがある。そういう意味では、引き分けという結果は良かったと言えるかもしれない。
もちろん、負けに等しい内容だったことをしっかり反省した上でのことだが。
試合内容の前に、まずは前日のジーコのコメントを紹介したい。
スポーツナビより。
――明日のボスニア戦で試すシステムは、本大会を意識したメンバー構成なのか?
いつも言っていることだが、自分はみなさんのようにシステムについては特にこだわりはない。確かに明日は4−4−2でいくし、本大会でも使うこともあるだろうが、それ以外にも3−5−2もあれば、3−6−1もあるわけで、自分としては選手が力を発揮できる形というものしか考えていない。もし「最高のシステム」というものを使ったとしても、そこに選手たちの気持ちが入っていなければ何にもならないだろう。大切なのは精神と肉体と技術、それらがいいものを生み出す状況がないと、システムというものは無駄であるということだ。
自分もこの考え方に大賛成だ。
システム論に偏ってしゃべる人は基本的に本当のサッカーを知らない、プレー経験の浅いタイプの人が多い。どんなシステムでも、一人一人がポジションに与えられた役割をキッチリ果たせば機能する。だから、選手が理解&プレーしやすいシステムであることが一番重要なことなのだ。
そして、さらにジーコはこう続けた。
ただ大切なのは、数多くの試合や練習の中で、試合の中で選手が迷わないこと。例えば、4(バック)で始めて3に移行するとか、逆に3から始めて4になるとか、いろんな流れによって変わってくることが多くある。それを選手たちがいかにスムーズに移行できるか。
「4バックか? 3バックか?」そんな低レベルな議論が発達した日本では、この辺りのシステムに関する考え方がメディアを先頭にかなり誤認されているように感じている。何度も繰り返すが、選手ひとりひとりがポジションに与えられた役割を果たせるのなら、4でも3でも構わないのだ。
こんな議論をさせる原因のひとつはフラット3の先導者、前任のトルシエ監督にもある。
しかしトルシエが固定フォーメーションにこだわったのは、戦術眼の浅い日本人がシステムを使い分けるのは不可能と判断してのこと。フラットな3バックが絶対的に優れているから使ったわけではない。
「4バック崩壊」とワンパターンな見出しを付けるメディアには、もう何も言うことはない。好きにして欲しい。
ただ、こんな無責任な表現が「あ、4バックって悪いシステムなんだ。3のほうがいいじゃん。」と的の外れた誤解を生むことが残念で仕方がない。
中盤のプレスの無力化、前線の追い込みの無さ、ボランチが空けすぎたディフェンスラインとの間隔。
原因は4バックであること以外に山ほどあるというのに・・・。
だいぶ前置きが長くなってしまったが、選手個人について。
そしてこの試合で最も気になった基本的技術の無さについて。
◎中田英寿
ロスタイムのゴールを抜きにしても、唯一無二の存在であることがますます浮き彫りになった。彼が入ることで明らかにボール回しの質が変わった。ただ回すだけでなく、縦パス・サイドチェンジが増えて"攻め"のボール回しに変化した。
さらに特筆すべきは判断の速さ。フィンランド・インドなど、プレッシャーの弱い相手に慣れた国内組とはプレーのスピードが明らかに違った。
◎中村俊輔
ボールタッチがいつもより少なかったが、前半ラストの福西へのパス、そして2つのアシストの精度はさすが。本大会に向けてもっとコンディションを上げていって欲しい。
◎高原直泰
相手の体の大きさや足の長さに戸惑う選手が多い中、彼のプレーは安定感があった。激しいボスニアのプレスに負けず、体を入れてファールをもらっていた。彼のドイツでの経験は、クロアチア戦での日本の隠れた武器になるだろう。
◎宮本恒靖
3バックのときより1vs1で対応するシーンが増えたが、シュートブロック・ドリブルカットなど素晴らしい対応をしていた。さらに欲を言えば、中盤のルーズなポジションに声を出して修正できればもっと良かったと思う。
×中澤祐二
PKを与えたプレーは実に中途半端だった。アタックするならエリアに入る前にするべきだし、バルバレスのずるがしこさに負け、彼は2失点の起点になってしまった。
動き全体にも迷いがあった。その原因は役割の変化があるのではないか。3バックならば後ろで常に宮本がカバーに入ってくれるので積極的に当たりにいけるが、4では飛び出しリスクを考えながら動く部分もある。もしもサントスが気の利いた左サイドバックならば、もっとガンガンいけるだろうが。。。
×福西崇史
中田の判断の早さに反比例し、国内レベルのプレースピードを露呈してしまった。ボールを持ってから出すまでがとにかく遅い。守備でもサイドから攻められたとき、中田とのバランスは余り良くないようだった。サイドにプレッシャーをかけるわけでもなく、クロスのセカンドボールもあっさり相手に与えてしまった。プレーに元気がなかったのが気にかかる。
×三都主アレサンドロ
やっぱり守備は相当に不安あり。マークの受け渡しをせずに中央に釣られていったり、1vs1の場面でも抜かれないのはいいが間合いを空けすぎて余りに簡単にクロスを上げさせすぎだった。俺がオーストラリアやクロアチアの監督ならば、絶対にサントスのところから攻めさせる。
中澤の負担を軽くするためにも、もっと守備に気の利いた選手を使いたいところだ。。。
×足先で探るような素人守備はちょっと。。。
攻守の切り替えの遅さと共に、全体的に気になったのがこれ。
ボスニアの選手は体ごとぶつかって来ているのに対し、日本は足を伸ばしてくすぐるような軽い守備をして、何度もアッサリとかわされていた。非常に良くない、というよりこれはサッカー初心者の守備だ。
課題が山ほど見つかり、収穫の多い試合だった。
試合後の中村俊輔のコメント、
「こういう試合は一回でも多くやりたい」
全くそのとおりである。


