前半 〜まさに親善試合〜
今回の日本代表の出来について述べる前に、
まず言っておかなければならないのが、
「前半のアンゴラは戦っていなかったこと」だ。
前半、日本代表の攻撃はとてもスムーズなパスを繰り返してゴールに迫った。その大きな原因は、FWの柳沢と高原が楽にボールを受けることができたことに他ならない。アンゴラのディフェンスは驚くほどルーズだった。ポストに入ったFWに対するプレッシャーが一切ない。これがドイツW杯予選を、わずか6失点に抑えて1位通過を決めたチームとはとても思えなかった。
親善試合にふさわしい雰囲気のアンゴラ。選手もこんな試合でケガをしたくないと思っていたのだろう。彼らに戦う姿勢は全くなかったと言っていい。
もっとも、逆に言えば敵のプレッシャーが弱ければ、我らが日本代表はここまでテクニカルな試合ができるということだ。普段、パスミスをしたシーンなどで、「な〜んだコイツら下手くそじゃん」と単純に言ってしまう人はよく考えて欲しい。その原因を作っている相手のディフェンスの力を。やはりこれだけサッカーが普及した中で、日本代表に選ばれるほどの選手。只者であるはずがないのだ。
前半を総括すると、「内容は練習試合と同レベルのもの。全く参考にはならない」と言える。
そして後半、監督にゲキを飛ばされたのか、眠っていたアンゴラ代表は激しくガツガツ戦う戦士に生まれ変わることになる…。
後半 〜松井大輔が見せた可能性と、確認できた攻撃の形〜
松井大輔−。
以前ジーコが言っていた。「もうW杯のメンバーは9割方固まった。しかし、他に切り札があれば私は歓迎する。」
『日本代表の最後の切り札』
そう、それこそが松井大輔なのだ。
ずっと昔から松井を知っている人は、今日の松井のプレーに違和感を感じたかもしれない。「あれ?もっとファンタジックにプレーする選手じゃなかった?」と。前線で激しく体を入れてボールを奪い返す、危険と感じたら相手をつかんででも止める。その姿は中田英寿のようでもあった。松井がフランスから持ち帰った収穫と言ってもいい。サーカスのスターだった男が、男のリングに雄々しく登場したのだ。
サッカーにおいて、オフェンスとディフェンスを完全に切り分けることは絶対に出来ない。オフェンスとは、ディフェンスでボールを奪った位置から始まり、ディフェンスとは、オフェンスでボールを奪われた位置から始まる。オフェンスが良ければディフェンスをする回数が少なくなり、ディフェンスが良ければオフェンスに行ける回数が増えるのだ。
後半、明らかに動きの良くなったアンゴラに日本は苦戦していた。後ろからガツガツ当たってくる強いプレスに、柳沢や高原たちのミスも増えていった。オフェンスでボールをつなげないので、ディフェンスに回る回数が増える。そんな悪循環の中で、司令塔の中村俊輔のボールタッチは激減してしまう。
そんな嫌な雰囲気を変えたのが松井だった。
ボールをつなげないのなら、高い位置でボールを奪ってしまえ。そうすればパスなんか繋がなくても、すぐにゴールに迫ることができる。
松井のハードなタックルは、身体能力に長けるアフリカ人相手にも一歩も引けをとらない。アフリカ選手の多いフランスリーグでプレーする彼には当然のことなのだろう。
そして迎えた後半終了間際−。
駒野のスローインを受けた俊輔が逆サイドへクロス。それを柳沢が折り返して、松井自身も「珍しい」と語るヘディングでゴールを決める。
この、逆サイドへクロスを入れて折り返したボールをシュートという形は日本代表が繰り返しやってきた形だ。単純にクロスを入れても、身体能力の強い世界レベルの選手には、競り負けてしまうことが多い。しかし、左へ右へボールが振られるこの形ならば、相手もマークに付ききれずフリーでシュートすることができる。それは真剣になったアンゴラ相手にも通用することが証明された。
日本のように、フィジカルで負けるチームがクロスから得点をするには、「マークをはずす」「早いクロスをディフェンスとキーパーの間に入れて、走りこんで勝負」「クロスの折り返しをねらう」 これらの形しかあり得ないのだ。
つまり、「競って負けるのなら、競らないでシュートできる方法を考えろ」というわけだ。
それが確認できたこと。そして松井が見せた可能性。
この2つは今回の試合での収穫と言っていいだろう。
さて、個別の選手に目を移してみよう。
稲本−。
無難にこなした印象だが、やはりこの役割ならば福西の方が上ではないかと思ってしまう。彼の持ち味である、ダイナミックな上がりからの攻撃参加が封じられてしまう今日の役割では、稲本は常に消化不良を抱えてしまうだろう。
そしてもう一つ。宮本が試合後に言ったように、稲本が後半でバテてしまったことにも言及しなければいけない。この試合、稲本よりも動いていた選手は沢山いたはずだ。これも普段、クラブで試合に出てない故の弊害か…。稲本がW杯で活躍するには、まずクラブでの活躍が必須条件となる。
駒野−。
やはりクロスの精度は抜群に良い。そこが加地とは違うところだ。
ただし、上がりが遅い、もしくは中途半端なシーンが多々見られる。
自分に出来ることをフルパワーで燃焼した松井に比べると、同い年とはいえ、まだまだ精神面の上昇余地があるように感じた。
そして後半、俊輔が1vs1で振り切られてそのままクロスを上げられたシーン。おそらく駒野はディフェンスでは中央に絞るように指示が入っていたと思うが、あれは駒野がカバーに入らなければいけない。
3-5-2のウィングバックの役割をシンプルに言うならば、「相手にクロスを上げさせない。そして自分がクロスを上げる」ということなのだ。
高原&柳沢−。
これだけ外せばもうスッキリだろう。ボールのもらい方や動き出しを見ていれば、やはりこの2人がファーストチョイスであることは揺るがない。田中達也がいれば、唯一そこに割って入る可能性があったと思うが、ケガをしてしまったのは本当に残念だ。
しかし…、なぜかこの2人が組むと決定機を外す印象がある…。
海賊ひでが選ぶMOM−。
中田英寿。
彼しかいないでしょう。
ボールの展開、決定機の演出、相手のスキを見逃さないボール奪取。
何をとっても世界レベル。
ただし唯一気になったのが、ボランチをやっていてもトップ下のクセがたまに出ること。ボランチの選手が自陣でスルーをするなんてあり得ない。以前、自陣深くで危険なボールキープをして、そのままゴールを決められた試合があった。ホンジュラス戦だっただろうか?
あの試合にもあったように、ボランチの位置で危険な選択肢を選ぶことがごくごく稀に見られる。
それが本番で裏目に出てしまわなければいいのだが…。
中田自身、ドイツW杯を最後と考えているだけに、悔いのない大会にしてもらいたいと心から願う。


